THE屋号 加多来
多くの人が加わり語り合う場に

 多くの人が来て、仲間に加わり、語り合う場にしたい――。江戸川区中葛西一丁目の喫茶店「加多来」の屋号にはそんな思いが込められている。店主の水野和美さん(51)によれば「“かたき”って読む人が多い」が、会社員の夫・憲治郎さん(55)が考えたこの屋号は「かたらい」と読むのが“正解”。ただ、最初から読めた人はいないらしい。

 「加多来」は同区立葛西中学校の向かいに今年五月末に開店したばかりだが、水野さんは以前、自宅(同五丁目)で同名の店を営んでいたので、その再出発でもある。八五年ごろ、和美さんは憲治郎さんの夢でもあった喫茶店を開くが、家事や子育てに追われ、「すべてにゆとりがなく夢中でした。寝言で『いらっしゃいませ』と言っていたこともあるみたいで」(和美さん)。十数年後、店を閉め、和美さんは理容師の資格を取り理容店を開店。この店は現在長男が継いでいる。

 忙しくて苦労も多かった三、四十代が過ぎ息子二人も働きはじめ、五十歳を過ぎた和美さんに穏やかな日々が訪れた。そんななか十八歳と高齢の愛犬・力(りき)から自然体で生きる素晴らしさを教わったという和美さん。今後の人生を「肩ひじ張らず自分らしく細く長く生きたい。無理せず楽しく暮らしたい」と考えたとき、和美さんは加多来での日々を思い起こす。客やパートさんとの会話、料理が喜ばれた思い出、お客さんから頂いたスイカをみんなで食べた日のこと――和美さんは「喫茶店の仕事が好き」なのに改めて気づいた。

 気持ちを新たに開いた新・加多来では、以前に比べてお客さんとの距離が近く感じられ、いまがいちばん充実している。「無理はしない」のがいまの信条で、当面、土日以外は午後三時閉店(水曜定休)だ。前の常連客には「気を使わせてはかえって申し訳ない」と開店の案内はしなかったが、そのうちの一人が偶然この屋号を見つけ、「あ、やっぱり! また水野さんの手料理が食べられるね」と喜んでくれた。珍しい屋号がうれしい再会を演出してくれたが、一方、屋号の読み方や意味を尋ねられることが、客との会話の糸口になることも多い。この屋号は今後も和美さんと客との距離を近づけてくれそうだ。

TEL 5605・2376
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